農地を売る、転用する

農地

農地を売る、転用する際に必要となる農地法の許可申請の種類は、2つに分けることができます。

図では3つに分かれておりますが、2つに分けるポイントは、農地のまま使ってもらうか(農地法3条)農地以外に「転用」するか(農地法4条、5条)です。

まずは農地のままパターン(農地法3条)のご説明から入りたいと思います。農地バンクについての記述までが農地のままパターンのご説明となります。

その後「転用」パターン(農地法4条、5条)のご説明をいたします。

「農地法の許可申請の種類3つの図示」1つ目が農地を農地のまま名義変更、2つ目が自分の農地を転用、3つ目が転用と名義変更があわさったもの


それぞれ、農地法3条、4条、5条の許可申請手続きといいます。

 

農地を農地のまま名義変更するには

「農地を農地のまま名義変更するには」という章立てを表す文章が入った図

農地を売りたい方と買いたい方のモデル図

このページは、主に、農地を売りたいとお考えの方に対する情報を提供することになります。

農地を買いたい(新規就農をしたい!経営拡張をしたい!)とお考えの方への情報は、農地法の許可申請の流れ(農地法の許可申請とはそもそもどういったものなのか、その必要書類)などになります。

「農地の相対取引の一連の流れ」この図ではまず契約があり、その次に行政書士による農地法許可申請手続き、その後の司法書士による登記申請手続きという流れを紹介している

通常は、契約のあとに、農地法の許可申請となるかと思いますが、この2つの順番は、逆でもかまいません

この2つ(契約と農地法の許可)があって、農地の名義変更が有効になります(売買代金の支払いを名義変更の条件とすることはできます)。

また、これは、お金が発生しない贈与でも同じです。

またお金は発生するけども貸すだけだという契約、賃貸借契約でも同じです。

贈与も賃貸借も、契約と農地法の許可があって、農地の名義変更が有効になります。

例外もありますが、考え方としては、契約の仲間なら、農地法の手続きが必要になると考えてよろしいかと思います。契約の仲間でない、時効取得、相続では、農地法の手続きが不要となります。

ここで、農地がまだ先代の名義となっている方への情報提供です。

 

農地の譲渡人の登記名義が、まだ先代のままになっているというモデル図

 

まだ名義が先代になっているが、農地を売りたい(贈与したい、貸したい)方のうち、具体的な譲渡先が決まっている方への情報提供としては、いったん相続の手続きは必要となります、ということがあります。

農地を売りたいとお考えの方のうち、名義は先代の名義であり、まだ具体的な譲渡先が決まっておらずとりあえずただでもいいので処分したいとお考えの方は、条件は厳しいですが相続放棄という選択肢もあるかと思います。寄付という選択肢は、難しいかと思います。

相続した田舎の土地建物を処分したいときに「相続放棄」は使えるのか?相続した田舎の土地建物を処分したいときに「相続放棄」は使えるのか?
田舎の実家の土地を相続したけど、管理も大変なので、町に寄付したいと考える方へ 田舎の実家の土地を相続したけど、管理も大変なので、町に寄付したいと考える方へ

不動産の名義変更では複数の手続きが必要になることが多くあります。まずは、お近くの司法書士事務所にて、どのような流れになるのか、ご相談をお受けになると良いかと思います。

司法書士事務所をご存じない場合は、お近くの司法書士会へご相談ください。また、ご実家の不動産の処分をお考えならば、その土地の司法書士にご相談なさることも良いかもしれません。
司法書士会リンク集

農地を売りたい方と買いたい方のモデル図

ここで、話が最初に戻ります。

農地を農地のまま(=転用せずに)名義変更するには、原則として、農地法第3条の許可が必要となります。

この農地法第3条の許可申請のなかでのチェック事項は、その譲受人がちゃんと農業をなさるのか、ということになります。

これを形式的にチェックするため、例えば南関町では、取得者が、今回取得する農地を含めて30アール以上「耕作」しなければ許可されない、という要件があります(「所有」のみではダメです。30アールは、市区町村ごとに違います。)

農地法第3条許可申請(農地を農地のまま名義変更する)の添付書類を確認します
農地法第3条許可申請(農地を農地のまま名義変更する)の添付書類を確認します。 下記一覧表のざっくりとした読み方(農地法第3条編) 下記一覧表のざっくりとした読み方をご説明します。行政書士に頼まずに、ご自身で農地法第3条申...

農地を売りたい買いたい(貸したい借りたい)を手助けするいわゆる農地バンクとは?

ここまで、農家同士による相対取引を念頭にご説明をしております。次に、いわゆる農地バンク(熊本県ならば公益財団法人熊本県農業公社がおこなっている、農地売買等事業および農地中間管理事業をここでは指すこととします)についてご説明します。

公益財団法人_熊本県農業公社 《農地売買等事業》公益財団法人_熊本県農業公社 《農地売買等事業》 
公益財団法人_熊本県農業公社 《農地中間管理事業》公益財団法人_熊本県農業公社 《農地中間管理事業》 

国による農地の集積・集約化をすすめるという事業目的のもと、それぞれの県で農業公社を作り、集積・集約化事業を行っています。集積・集約化事業を推進するため、さまざまの補助金や、税の優遇措置があります。

現状として、売主買主(貸主借主)が決まっている状態で農地バンクがあいだに入ることも多いとのことですが、南関町においては、受付の南関町から農業アドバイザーの方へ、さらに農業アドバイザーの方から農業の担い手の方へという新規農地の紹介をするという流れもあるそうです。

まずは、お近くの市町村役場にてご相談下さい。

農地を宅地や太陽光発電施設に転用するには

「農地を宅地や太陽光発電施設に転用するには」という章立てを表す文章が入った図

ここまでは、農地を(農地のまま)売りたい買いたい(貸したい借りたい)という場面の制度についてご紹介して参りました。次にこの章では、農地の転用について、ご説明いたします。

この場面では、取得者が農業者でないとダメという制限は、ありません。今度は、なぜ今なのか?計画は、ちゃんとしているか?などが、チェック項目となります。

農地を農地以外にする(転用する)場合に必要となる農地法の許可は、4条(自分の所有する農地を、自分で転用する)と5条(転用と名義変更の合体)の2つのパターンがあります。

提出書類を比較してみてみます

添 付 書 類 3条 4条 5条 備   考
法人登記簿謄本 申請者が法人である場合
法人定款又は寄付行為 申請者が法人である場合
土地登記簿謄本  
位置図及び周辺状況図    町管内図又は住宅地図
字図    
配置図    敷地内の家屋建築位置、駐車位置、   資材等の配置位置、植栽の位置、家庭菜園の位置等詳細に表記すること。
排水計画図    
事業計画書    
資金計画書    
資金証明書    預金残高証明書

 

資金借入(又は貸付)契約書

*100万円未満の場合は不要

その他参考となる図面   宅地の見取り図、設計図等
隣接地の同意書   隣接農地の地権者の同意
排水同意書   排水設備を設置する事業の場合
(通常は、地元区長)
土地改良区意見書   申請地が、土地改良事業区域内の場合
他法の許認可証明 農地転用許可事業を実施するにあたり、他法令の許可等が必要となる場合
小作農の同意書 申請地が、小作地である場合
農用地外である証明    
住民票 町外者の申請時
耕作証明     町外者の申請時
営農計画書及び農地取得後における作付け計画書
(通作距離と農地の効率利用)
    町外者の申請時
    町外者の申請時

まず、表からは少し分かりにくいですが、4条、5条の添付書類からすると、3条の添付書類は少ないです。このため、さすがに最近は減りましたが、転用するけども3条で出しといて!という無茶をいう業者さんに遭遇したことはございます。実際には転用するけれども、転用の許可を得ていないということになりますから、これは無断転用となります。このようなご依頼の場合は、ご依頼をお断りすることになります。

結局、無断転用をすると、バレます。当然、原状回復せよ!元に戻せ!という話になりますし、今後また別の農地法許可申請をする際には、無断転用を原状回復しなければ、今回の農地法許可申請は認められない、という話にもなります。くれぐれも無断転用は、なさいませんようお願い致します。

4条と5条の提出書類は、全く一緒ということがお分かりいただけるかと思います。

農地の転用をするということでは、チェックすべき内容が同じだからです。

農地転用許可制度における立地基準とは

必要書類の表の下から4段目、「農用地外である証明」は、その土地が、農業振興地域内における農用地区域のなかにあるかどうか?をチェックするものです。これに該当すると、農地転用許可制度の立地基準によると、農地法による農地転用は、原則不許可となります。

もし、申請地が、農業振興地域内における農用地区域のなかにある場合、計画からはずしてもらう(これを農振除外といいます)ことが農地法の第4条、5条の許可を受ける要件となります。

(3条の場合、農地を農地のまま移転するものですから、農用地であっても大丈夫です。)

 区分 営農条件、市街地化の状況  許可の方針
農用地区域内農地 市町村が定める農業振興地域整備計画において農用地区域とされた区域内の農地 原則不許可(市町村が定める農用地利用計画において指定された用途(農業用施設)等のために転用する場合、例外許可)
甲種農地 市街化調整区域内の土地改良事業等の対象となった農地(8年以内)等、特に良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法の認定を受け、告示を行った事業等のために転用する場合、例外許可)
第1種農地 10ヘクタール以上の規模の一団の農地、土地改良事業等の対象となった農地等良好な営農条件を備えている農地 原則不許可(土地収用法対象事業等のために転用する場合、例外許可)
第2種農地 鉄道の駅が500m以内にある等、市街地化が見込まれる農地又は生産性の低い小集団の農地 農地以外の土地や第3種農地に立地困難な場合等に許可
第3種農地 鉄道の駅が300m以内にある等、市街地の区域又は市街地化の傾向が著しい区域にある農地 原則許可

農業振興地域内における農用地区域のなかにある場合に、見直し(農振除外)をしてもらっても、その土地が、甲種農地であったり、第1種農地であるから、農地法の許可が受けられないということはありえます。

この申請地が、どの区分にあたるのかは、申請地の市町村役場にて、確認することができます。

農地を宅地にする場合に、まずチェックすること
農地を宅地にする場合にまずチェックすることは、申請土地の「農地区分」です。これは「農地区分」によっては、そもそも農地転用ができない、ということもありうるからです。申請土地の「農地区分」は、申請土地の市区町村の農業委員会または農林課...

 

* * *


下記リンクは、当サイトのトップページ(目次のページ)となります。サイトの全体像は、こちらをご覧ください。

 

司法書士・行政書士まつむら・まつなが事務所 – 熊本県玉名郡南関町大字関町1472番地1農地の名義変更.com トップページ(目次のページ) 
タイトルとURLをコピーしました